岩手スポーツマガジンStandard(スタンダード)岩手をひとつにするのは、スポーツだ〜After 3.11『盛岡商業高校サッカー部』 〜

index.gif

盛商top2.jpg

[5/6更新] 全国と岩手をつなぐ“支援の架け橋” 盛商サッカー部総監督・齋藤重信が送る東奔西走の日々

After3.11目次>>

 鹿島アントラーズ小笠原満男選手の恩師、そして2007年に岩手県勢では初となる全国制覇を成し遂げた名将として、斎藤重信の知名度は絶大だ。その人脈はJリーグで活躍する選手やスタッフから地元のコーチ陣まで多岐にわたる。震災後、全国各地のチーム、関係者、メーカーから盛岡商業高校へ支援物資が集められ、斎藤総監督をはじめ、盛商関係者らが何度も自らの足で被災地に届けている。果たして彼らは何を想い、どのような活動をしているのだろうか。

奪い去られた期待感

 地震当日の3月11日午前10時。私は盛商グラウンド脇にあるセミナーハウスにお邪魔し、斎藤総監督にこれまでの手応えやシーズンの抱負を伺っていた。本来であれば4月下旬に発行される予定だった「Standard 5-6月号」の取材のためである。快晴の空の下、真剣に、はつらつと練習に打ち込み、その成果を試合で発揮する生徒の姿を想像すると期待に胸が膨む。例年であれば4月はi-LEAGUEとプリンスリーグ東北の開幕の時季。岩手の長い冬を越え、いよいよサッカーシーズンが始まりを告げる時季に発刊する5-6月号では、多くのページをサッカーに割り充て、参加する県内全チームおよびプリンスリーグに参戦する東北の各チームを大きくとりあげるはずだった。

 ところが、である。

 その数時間後に世界が一変してしまうとはだれが予測できたであろうか。マグニチュード9.0の大地震により岩手県内はほぼ全域で停電。地殻変動によって引き起こされた津波は港に近づくに連れ威力を増し、人を、車を、家を押し流し、スポーツをする環境をも奪い去った。つい数時間前まで抱いていた期待感は、いつの間にかどこかへ姿を消していた。

全景.JPG
(写真:全体練習が再開されたのは地震の数日後。支援活動にも積極的に取り組んだ)

全国のサッカー関係者から寄せられる物資

齋藤総監督.JPG
(写真:荷物の積み降ろしを生徒に指示する齋藤重信総監督)

 震災後、いち早く支援に立ち上がった小笠原選手の動きに呼応するかのように、盛商サッカー部の支援活動も迅速、かつ積極的だった。地震から12日が経過した3月23日、生徒たちは3年生を中心に盛岡市内で募金活動を実施。その後5日間の活動で集まった金額は130万円に上る。また、岩手のサッカー界を代表する人物のひとりである齋藤重信総監督の多岐にわたるコネクションを活かし、盛岡商業高校にはサッカー用品や生活物資が数多く集められた。物資は集まった分以外にも、横浜の倉庫に大量に保管されているという。前述の小笠原選手、ジュビロ磐田に所属する山本脩斗選手、川崎フロンターレ・サンフレッチェ広島・ガンバ大阪・ジュビロ磐田などのJリーグチーム、全国の高校や大学などから寄せられた物資は、斎藤総監督をはじめとした盛商関係者自身の運転で沿岸に届けられている。

 訪れた先は被害の大きかった陸前高田市、大船渡市、釜石市、大槌町、宮古市など沿岸の広範囲に及ぶ。はじめは大きな避難所に届けていたが、届けた際に、物資が届かない小さな避難所の存在が判明すると、その後は週に数度、大小問わず各地の避難所に衣類などの生活用品を届ける毎日を過ごした。しかも、斎藤総監督が「物資を闇雲に届けるのではなく、避難所を訪れた際に必要な物などの情報を仕入れている」と話すように、得た情報を次の輸送に活かすことで、被災地の方が本当に必要な物を届けている点も見逃せない。

 4月10日にはアシックス社よりサッカー用のショルダーバッグ630個が盛岡商業に届けられた。ゲームシャツ、スパイクなどは徐々に行き渡り始めたが、今度は荷物をまとめるバッグがないとのことから斎藤総監督が要望。同社が快諾し、この日届けられたのだという。被災地で必要なものは刻一刻と変化しているが、多くの方からの支援もあり、少しずつではあるがそろい始めている。

みんな、サッカーでつながっている

 先日、大槌高校サッカー部の生徒に会いにいった際、ジュビロ磐田のシャツを着ている生徒がいた。話を聞くと、「齋藤監督がもってきてくれました。すごくうれしかったです!」と声を弾ませる。

 盛商関係者が届けているもの、それは言うまでもなく生活に必要な物資だ。しかし、それだけではない。物資とともにサッカーに対する情熱の灯も点けて回っているように思える。1枚のゲームシャツ、1足のスパイクが、サッカー少年たちの心に忘れかけていた情熱を喚起させてくれるのだろう。そういった意味でも盛商サッカー部関係者が行う活動の功績は非常に大きい。物があっても本人たちの意欲が湧かなければ本末転倒なのだから。

 日本サッカーの頂点に位置するJリーグクラブ。その裾野を支える社会人、大学リーグ。未来のJリーガーを夢見るサッカー少年たち。すべてのサッカー選手をサポートするメーカー。一連の支援活動をみると、顔を見たことがなくても、声を聴いたことがなくても、サッカーという共通項を介して、そのすべてがつながっているのだと強く感じずにはいられない。その中でも斎藤総監督をはじめとする盛商サッカー部関係者は、Jのチームや大手メーカーなどの大規模組織と、地元のサッカー少年や指導者らを中継する架け橋として重要な役割を担っている。

(取材/高橋拓磨)

ジュビロ生徒.JPG
(写真:斎藤総監督が届けたジュピロ磐田のピステを着て笑顔を見せる大槌高校サッカー部の生徒たち)

メッセージ2.JPG
(写真:京都両洋高校から届いた数十通に及ぶ手紙。同世代の生徒を励まそうと、心のこもったメッセージが綴られている)

8Dw93C782CC82B288C493E02.gif
フォト_黒.png
93C78ED283A839383P815B83g2.gif